ビルドアップ走は、中距離走・長距離走のランナーに広く取り入れられている代表的な練習方法のひとつです。
「ビルドアップ走って、少しずつペースを上げていけばいいんでしょ?」
このように何となく理解していても、具体的なやり方や期待できる効果まで詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。どんなトレーニングでも、正しい方法を理解して取り組むことで効果を最大限に引き出せます。
この記事では、ビルドアップ走の正しいやり方、期待できる効果、ペース設定のコツについて詳しく解説します。
この記事の結論
- ビルドアップ走とは、走り始めは余裕のあるペースで入り、ゴールに向かって少しずつスピードを上げていく練習方法です。
- 持久力とスピードの両方を効率よく鍛えられるほか、レース後半の失速を防ぐ効果も期待できます。
- 大切なのは、最初に飛ばしすぎず、最後まで無理なくペースアップできる設定で行うことです。
- 初心者の方はゆっくり入り、確実にペースを上げながら走り切ることを目標にしましょう。
ビルドアップ走に期待できる効果

ゴールまで徐々にスピードを上げるにはスタミナが必要です。そのため、ビルドアップ走では持久力(スタミナ)を上げることができます。
また、ゴールに向かってペースを上げていくことから、レース後半でもスピードを維持する力(スピード持久力)を向上させることもできます。実戦に近い走りをすれば、レース後半に強くなります。
つまり、基礎的な持久力の向上や、スピード持久力のアップ、レース後半に勝負強くなる、といった効果を期待することができるのです。
スピードをさらに強化したい方は、インターバル走もおすすめです。

より高いスピードを養いたい場合は、レペティションという練習方法もあります。

ネガティブスプリットの練習にもなる
ビルドアップ走は、前半抑え気味で走って後半ペースを上げる「ネガティブスプリット」の練習にもなります。
ビルドアップ走は、ネガティブスプリットの「最初はある程度抑えて、後半ペースを上げる」という点が似ています。
ビルドアップ走もネガティブスプリットも、後半に大きな力を使う後半型のペース配分になるので、レース本番を意識したビルドアップ走を行えば、レースで行うネガティブスプリットのトレーニングになるのです。
ネガティブスプリットは後半失速しにくい走り方であり、上手にペース配分することで記録を狙いやすいので、ビルドアップ走でネガティブスプリットの能力を向上させることは重要だといえます。
ビルドアップ走の方法と具体例
ビルドアップ走とは、あらかじめ決めた距離のスタートからゴールまで、徐々にペースを上げていく練習方法です。そのため、どのようなやり方でも、徐々にスピードを上げていけばビルドアップ走になります。
ですが、基本的なやり方があり、基本的なやり方をすることによって効果は上がりやすく、行いやすくもなります。また、基本的な方法を知ることで、それをベースにして様々なバリエーションを考え行うことができます。
では、ビルドアップ走の基本的な方法を説明していきます。1周400mの陸上競技場のトラックで行う場合、1周走るごとに平均的に緩やかにペースを上げていきます。
4,000mのビルドアップ走で、始めは4:00/km(1km4分)ペースで走り、1周ごと(400mごと)にスピードを上げて、最終的に3:30/km(1km3分30秒)ペースまで上げる場合を例にすると、4:00/kmペースは1周96秒。
3:30/kmペースは1周84秒。1周400mのトラックで4,000m走る場合は10周することになります。
つまり、最初の1周と最後の1周の差は12秒であり、10周で12秒上げることになります。1周ごとにペースアップすると9回ペースアップすることになるので、1周ごとに約1.3秒上げることになります。
先ほどの例を、もっと分かりやすく説明すると、次のようになります。
トラックで行う具体例(4,000m)
1周400mのトラックで4,000m走る場合は10周します。
例えば、ペース設定が以下の場合。
- 最初の1周:4:00/kmペース(400m=96秒)
- 最後の1周:3:30/kmペース(400m=84秒)
この場合、最初と最後の差は12秒です。
10周の中で9回ペースアップするため、1周ごとに約1.3秒ずつ速くしていけば、きれいなビルドアップ走になります。
その他の具体例
先程4,000mのビルドアップ走の例を説明しました。では、3,000mのビルドアップ走の例を挙げるとすると、最初の1周(400m)は90秒で入り、1周ごとに2秒上げて3,000m走るといった方法もあります。
緩やかに上げていくのではなく、1,000mごとに段階的に一気にペースを上げるという方法もあります。
自分の走力や目的に応じて、上げるペースは変えていきましょう。一番大事なことは、始めから最後まで確実にペースを上げていくことです。途中で走るペースが落ちるとビルドアップ走にならないので、気を付けましょう。
自分のレベルを考慮してペースを決めること
4,000mや3,000mのビルドアップ走の具体例を説明しましたが、その設定タイムは普通の市民ランナーよりも少し速いランナー向けです。そのため、タイムは自分の実力を考慮して設定してください。
【目安】
- 初心者:最後まで余裕を持ってペースアップできる設定
- 中級者:最後の1〜2kmでややきつい設定
- 上級者:ラストでしっかり追い込める設定
無理な設定にすると途中で失速しやすくなるため、まずは「成功しやすい設定」で始めるのがおすすめです。
最初遅すぎると効果は低くなるが、初心者はゆっくり入りましょう
ビルドアップ走を行う際、スタートは余裕のあるペースで走ることが大切ですが、最初の入りが遅すぎると効果は低下してしまいます。最初の入りが遅すぎると、後半楽に上げることができるからね。
そのため、最初は無理のないある程度速いペースで入ることが大切で、徐々にスピードを上げて追い込むことによって、ビルドアップ走の効果を得やすくなります。
ですが、これをランニング初心者が行うと、すぐにバテてしまい、徐々にペースを上げることができなくなるどころか、途中でペースが落ちてしまいます。なので初心者は、最初はゆっくり入るようにしましょう。
ちなみに、トレーニングの目的によっては、中級者や上級者でも最初はゆっくりとしたペースで入り、調子が良くなるにしたがってスピードを上げるという方法で走っても良いです。
ビルドアップ走の距離の目安
ビルドアップ走の距離は、走力や練習の目的によって変わります。初心者の方は短めの距離から始め、無理なく最後までペースを上げられる設定にすると良いです。
中級者や上級者でも、トレーニングの目的によっては短めの距離で行い、距離が短い分、スピードは速くなります。
一方で、フルマラソンのような長い距離に向けて練習する場合は、より長めの距離で行うこともあります。次は、レベル別におすすめの距離の目安を紹介します。
初心者は3〜5kmがおすすめ
ランニング初心者がビルドアップ走を行う場合は、3〜5km程度の距離から始めるのがおすすめです。
ビルドアップ走で最も大事なのは、途中で失速せず、最後まで少しずつペースを上げながら走り切ることです。距離が長すぎると後半にバテやすくなり、ペースアップできなくなることがあります。
そのため、まずは無理なく完走できる短めの距離で取り組み、ビルドアップ走の感覚を身につけましょう。
3kmでも十分に効果はあります。慣れてきたら目的に応じて、4km、5kmと少しずつ距離を伸ばしても良いですし、距離は短めのままでペースを少し上げてもOKです。まずは「きれいに上げ切る」ことを目標に取り組んでみてください。
中級者は5〜10km
ある程度走り慣れてきた中級者であれば、ビルドアップ走の距離は5〜10kmがひとつの目安になります。もちろん、目的によっては、3kmくらいの短めの距離で質を上げて行うのも効果的です。
5〜10kmくらいの距離になると、前半は余裕を持って入りつつ、後半にしっかりペースを上げることで、持久力とスピード持久力を効果的に鍛えられます。
例えば、10kmレースやハーフマラソンで記録更新を目指している方には、6〜8km程度のビルドアップ走が取り入れやすいでしょう。
距離が長くなるほど、最初のペース設定が重要になります。スタートから飛ばしすぎると後半に失速しやすくなるため、「最後の1〜2kmでしっかり追い込める」くらいの設定にするのがおすすめです。
無理なくペースアップして走り切れるようになったら、少しずつ距離やラストのペースを高めていきましょう。
フルマラソン対策なら10〜15km
フルマラソンで記録更新を目指している方は、10〜15km程度のビルドアップ走を取り入れるのがおすすめです。
このくらいの距離を徐々にペースアップしながら走ることで、30km以降の苦しい場面でも粘るための持久力とスピード持久力を効率よく鍛えられます。
例えば、前半はマラソンペースよりややゆっくり入り、後半にかけて少しずつペースを上げ、最後はマラソンペースより速いペースまで上げる方法が効果的です。
ただし、距離が長い分、設定がきつすぎると途中で失速しやすくなります。最後までしっかりペースアップできる範囲で、無理のない距離とペースを設定しましょう。
フルマラソン本番で後半に失速しにくい走りを身につけたい方に、10〜15kmのビルドアップ走は非常に効果的な練習です。
ビルドアップ走のおすすめ頻度
ビルドアップ走は、持久力とスピードの両方を鍛えられる効果的な練習ですが、負荷が高いため毎日行う必要はありません。
走力や疲労の状態に合わせて、ポイント練習として適切な頻度で取り入れることで、効果を高めながらオーバートレーニングも防げます。次は、レベル別のおすすめ頻度の目安を紹介します。
初心者は2週間に1回でも十分
ランニング初心者の場合、ビルドアップ走は2週間に1回程度でも十分効果が期待できます。ビルドアップ走は、走りながら徐々にペースを上げていくため、見た目以上に負荷の高い練習です。
慣れていないうちは筋肉や心肺への負担が大きく、頻繁に行うとかえって疲労が抜けにくくなることがあります。
まずは2週間に1回のペースで取り入れ、無理なく最後までペースアップできることを目標にしましょう。その間は、ジョギングやLSDなどの負荷の低い練習で土台を作るのがおすすめです。
ビルドアップ走に慣れてきて、「余裕を持って走り切れるようになった」と感じたら、少しずつ頻度を増やしていけばOKです。焦らず継続することが、走力アップへの近道になります。
中級者以上は週1回が目安
ある程度走り込みができている中級者以上のランナーであれば、ビルドアップ走は週1回を目安に取り入れるのがおすすめです。
ビルドアップ走は、持久力、スピード持久力、ペース感覚をまとめて鍛えられるため、定期的に行うことでレース後半の粘り強さにつながります。
10km、ハーフマラソン、フルマラソンなどを目標にしている場合でも、効果を実感しやすい練習です。
ただし、毎週必ず行う必要はありません。仕事や生活の疲れが強い時や、他に負荷の高い練習を行っている場合は、無理に実施しなくても問題ありません。一般的に負荷の強い練習は、週2回が良いとされているからです。
「ビルドアップ走はポイント練習のカテゴリーになり、頻度は体調に合わせて調整する」という考え方で続けると、ケガのリスクを抑えながら安定して走力を高められます。
疲労が強い時は無理をしない
ビルドアップ走を予定していても、疲労が強い時は無理に行わないようにしましょう。脚がとても重い、体がだるい、睡眠不足が続いているといった状態で行うと、思うようにペースを上げられないだけでなく、フォームが乱れたり、ケガにつながることもあります。
そのような日は、軽いジョギングやウォーキングに変更したり、思い切って休養を取ったりするのがおすすめです。しっかり疲労を抜いてから行った方が、ビルドアップ走の効果を得やすくなります。
トレーニングは、頑張ることと同じくらい、体調に合わせて調整することも大事です。コンディションが良い日に質の高いビルドアップ走を行いましょう。
負荷の高い練習の翌日は、疲労抜きジョグで回復を促すのがおすすめです。

ビルドアップ走で失敗しやすいポイント
ビルドアップ走はシンプルな練習ですが、ペース設定を間違えると途中で失速しやすくなります。せっかく取り組んでも、正しい方法で行わなければ十分な効果を得られないことがあります。次は、ビルドアップ走でよくある失敗例と、その対策について紹介します。
最初から飛ばしすぎる
ビルドアップ走で最も多い失敗が、スタート直後から速いペースで入りすぎることです。最初から飛ばしてしまうと、後半に余力がなくなり、ペースを上げるどころか失速してしまうことがあります。
また、前半にペースのピークをもってくることで、後半ペースを上げることは難しくなります。これではビルドアップ走本来の目的である「徐々にペースを上げる」という練習ができません。
ビルドアップ走のスタートは、「少し遅いかな」と感じるくらいでちょうど良いことが多いです。前半に余裕を持たせることで、後半にしっかりペースアップしやすくなります。
最後まできれいにペースを上げて走り切るためにも、最初は抑えめのペースで入るようにしましょう。
ペースの上げ幅が大きすぎる
ビルドアップ走では、一度に大きくペースを上げてしまうと、後半で急激に苦しくなりやすくなります。
特に長い距離のビルドアップ走を行う場合、各区間で急にスピードを上げすぎると身体への負担が大きくなり、最後までペースを維持できないことがあります。
ペースを引き上げる際は、無理に一気に速くするのではなく、少しずつ段階的に速くしていくのがおすすめです。
「徐々にペースを上げる」というビルドアップ走の基本を意識し、無理のない範囲で段階的にスピードを高めていきましょう。
最後まで上げ切れない
ビルドアップ走で途中からペースが落ちてしまう場合は、設定している距離やペースが現在の走力に合っていない可能性があります。
ビルドアップ走で大切なのは、最後まで少しずつペースを上げながら走り切ることです。途中で失速してしまうと、ビルドアップ走本来の効果を十分に得にくくなります。
もし最後まで上げ切れない場合は、次のように設定を見直してみましょう。
- 走る距離を短くする
- 最初のペースを遅くする
- ペースアップの幅を小さくする
無理のない設定に変更し、「きれいにビルドアップできた」という成功体験を積み重ねることが大切です。徐々に設定を上げていけば、自然と走力も向上していきます。
【まとめ】ビルドアップ走で持久力と後半の粘りを鍛えよう
ビルドアップ走は、走り始めは余裕のあるペースで入り、ゴールに向かって徐々にスピードを上げていく練習方法です。
スタミナとスピード持久力を同時に鍛えられるだけでなく、レース後半の失速を防ぎ、ネガティブスプリットの感覚を身につけるのにも役立ちます。
初心者は3〜5km程度の短い距離から始め、2週間に1回程度の頻度で取り入れるだけでも十分効果があります。慣れてきたら、設定タイムを少し短くしても良いですし、距離を少し増やしても良いです。
ビルドアップ走で最も大事なのは、最初に飛ばしすぎず、最後まで無理なくペースを上げて走り切ることです。
自分のレベルや目的に合った距離とペースで継続すれば、レース後半でも粘れる走力が身についていきます。

