中長距離走の練習方法の1つであるビルドアップ走。「ビルドアップ走は、少しずつペースを上げていけばいいんでしょ」などとざっくりとした感じで知っているけど、詳しくは知らないという方もいるかと思います。
どんな練習方法でも、効果や効率を上げるには、正しいトレーニング方法を知り理解することが重要です。そこで今回は、ビルドアップ走の正しい方法や期待できる効果を解説していきます。
ビルドアップ走の方法
ビルドアップ走とは、あらかじめ決めた距離のスタートからゴールまで、徐々にペースを上げていく練習方法です。そのため、どのようなやり方でも、徐々にスピードを上げていけばビルドアップ走になります。
ですが、基本的なやり方があり、基本的なやり方をすることによって効果は上がりやすく、行いやすくもなります。また、基本的な方法を知ることで、それをベースにして様々なバリエーションを考え行うことができます。
では、ビルドアップ走の基本的な方法を説明していきます。1周400mの陸上競技場のトラックで行う場合、1周走るごとに平均的に緩やかにペースを上げていきます。
4,000mのビルドアップ走で、始めは4:00/km(1km4分)ペースで走り、1周ごとにスピードを上げて、最終的に3:30/km(1km3分30秒)ペースまで上げる場合を例にすると、4:00/kmペースは1周96秒。3:30/kmペースは1周84秒。1周400mのトラックで4,000m走る場合は10周することになります。
つまり、最初の1周と最後の1周の差は12秒であり、10周で12秒上げることになります。1周ごとにペースアップすると9回ペースアップすることになるので、1周ごとに約1.3秒上げることになります。
その他の具体例
先程4,000mのビルドアップ走の例を説明しました。では、3,000mのビルドアップ走の例を挙げるとすると、最初の1周(400m)は90秒で入り、1周ごとに2秒上げて3,000m走るといった方法もあります。
緩やかに上げていくのではなく、1,000mごとに段階的に一気にペースを上げるという方法もあります。
自分の走力や目的に応じて、上げるペースは変えていきましょう。一番大事なことは、始めから最後まで確実にペースを上げていくことです。途中で走るペースが落ちるとビルドアップ走にならないので、気を付けましょう。
初心者は最初はゆっくり入りましょう
ビルドアップ走を行う際、スタートは余裕のあるペースで走ることが大切ですが、最初の入りが遅すぎると効果は低下してしまいます。最初の入りが遅すぎると、後半楽に上げることができるからね。
そのため、最初は無理のないある程度速いペースで入ることが大切で、徐々にスピードを上げて追い込むことによって、ビルドアップ走の効果を得やすくなります。
ですが、これをランニング初心者が行うと、すぐにバテてしまい、徐々にペースを上げることができなくなるどころか、途中でペースが落ちてしまいます。なので初心者は、最初はゆっくり入るようにしましょう。
ちなみに、トレーニングの目的によっては、中級者や上級者でも最初はゆっくりとしたペースで入り、調子が良くなるにしたがってスピードを上げるという方法で走っても良いです。
ビルドアップ走に期待できる効果
ゴールまで徐々にスピードを上げるにはスタミナが必要です。そのため、ビルドアップ走ではスタミナ(持久力)を上げることができます。また、ペースを上げていくことから、スピードを上げることもできます。実戦に近い走りをすれば、レース後半に強くなります。
つまり、スピードとスタミナのアップ、レース後半に勝負強くなる、といった効果を期待することができるのです。
ネガティブスプリットの練習にもなる
ビルドアップ走は、前半抑え気味で走って後半ペースを上げる「ネガティブスプリット」の練習にもなります。
ビルドアップ走は前述した通り、走り出しから走り終わりまで、徐々に尻上がりにペースを上げていく練習方法であり、ネガティブスプリットの「最初はある程度抑えて、後半ペースを上げる」という点は似ています。
ビルドアップ走もネガティブスプリットも、後半に大きな力を使う後半型のペース配分になるので、レース本番を意識したビルドアップ走を行えば、レースで行うネガティブスプリットのトレーニングになるのです。
ネガティブスプリットは後半失速しにくい走り方であり、上手にペース配分することで記録を狙いやすいので、ビルドアップ走でネガティブスプリットの能力を向上させることは重要だといえます。
自分のレベルを考慮してペースを決めること
4,000mや3,000mのビルドアップ走の具体例を説明しましたが、その設定タイムはそこそこ速いランナー向けです。そのため、タイムは自分の実力を考慮して設定してください。