ランニング中に突然脚の力が抜けたり、足がうまく前に出ずにバランスを崩したことはありませんか?
このような症状が繰り返し起こると、「脚の筋力が落ちたのかな」「走り方がおかしくなったのかな」と不安になる人もいるでしょう。
ランナーの間では、こうした症状を「ぬけぬけ病」と呼ぶことがあります。ぬけぬけ病は正式な病名ではありません。
私自身も、ぬけぬけ病の症状を経験しており、現在も自分本来の走り方を探しながら試行錯誤しています。
そこでこの記事では、ぬけぬけ病の症状や原因、治療方法、走り方との関係について、医学的な情報を確認しながら詳しく解説します。あわせて、私自身に起こった症状やこれまでの経過についても紹介します。
【この記事のポイント】
・ぬけぬけ病は、走っているときに脚の力が抜けたり、膝がカクッとしたり、足が引っかかったりするなどの症状がみられることがあります。
・ぬけぬけ病は正式な病名ではなく、動作特異性ジストニアと関連するケースもありますが、原因を一つに決めることはできません。
・フォアフット走法などに走り方を変えることで症状が変化する場合がありますが、特定の走法に変えれば改善するとは限りません。
・症状が続いている場合は、無理に走り続けたり、自己判断でフォームを大きく変えたりせず、医療機関に相談することも大切です。
・私自身も、股関節の故障後に症状が現れ、走り方を変えたことで症状が悪化した経験があります。現在も自分本来の走り方を探しながら、試行錯誤を続けています。
ぬけぬけ病とは?
ぬけぬけ病は、走っているときなどに脚へ力が入りにくくなったり、膝が抜けるような感覚が生じたりする、ランナーにみられる走動作のトラブルです。
医学的には、特定の動作を行ったときに症状が現れる「動作特異性ジストニア」と関連するケースがあります。
では、ぬけぬけ病にはどのような特徴があるのでしょうか。まずは、ぬけぬけ病の呼び方や医学的な位置づけについて見ていきましょう。
ぬけぬけ病は「ローリング病」「かっくん病」「足抜け」とも呼ばれる
ぬけぬけ病には、「ローリング病」「かっくん病」「足抜け」など、いくつかの呼び方があります。
いずれも、走っているときなどに脚の力が抜けたり、膝がカクッとするような症状を表現した呼び名として使われています。
ただし、これらは一般的に使われている呼称であり、正式な病名そのものを示すものではありません。
ぬけぬけ病について調べる際は、こうした別名も知っておくと、関連する情報を探しやすくなります。
ぬけぬけ病は動作特異性ジストニアと関係がある
「ジストニア」とは、本人の意思とは関係なく筋肉が持続的または断続的に収縮し、身体の動きや姿勢に異常が生じる状態です。
その中でも、特定の動作を行ったときに症状が現れるものを「動作特異性ジストニア」と呼びます。
ランナーの場合、走るという特定の動作をしているときだけ、脚の動きが不自然になったり、足や膝を思うように動かしにくくなったりすることがあります。
ただし、走っているときに脚の力が抜ける症状があれば、必ずしもジストニアが原因とは限りません。
そのため、「ぬけぬけ病かもしれない」と自己判断せず、症状が続く場合は医療機関で相談することが大切です。
ぬけぬけ病にはどのような症状がある?
ぬけぬけ病では、走っているときに脚へ力が入りにくくなったり、膝が抜けるような感覚が生じたりするなど、さまざまな症状がみられます。
症状の現れ方や程度には個人差があるため、「脚の力が抜ける」という感覚だけで判断することはできません。
ここからは、ぬけぬけ病でみられる主な症状について紹介します。
走っているときに脚の力が抜ける
ぬけぬけ病では、走っている途中に片方の脚へ突然力が入りにくくなることがあります。自分では普段と同じように脚を動かしているつもりでも、着地したときに脚を支えにくくなったり、次の一歩を出しにくくなったりすることがあります。
こうした症状が繰り返し起こると、走ることへの不安につながるだけでなく、フォームが崩れてバランスを保ちにくくなる場合もあります。
着地した脚の膝が抜ける
走っているとき、足が地面に着いた瞬間に、支えている脚の膝がカクッと抜けるように感じることがあります。
着地した脚で体重を受け止めにくくなるため、一瞬バランスを崩したり、腰が落ちたりすることもあります。
このような状態が繰り返されると、転倒への不安から走り方を意識しすぎてしまうこともあります。
足が引っかかったり、つまずいたりする
ぬけぬけ病では、走っているときに足を思うように前へ運べず、足先が地面に引っかかってつまずくことがあります。
本人はいつも通り脚を動かしているつもりでも、脚の動きが一瞬うまくかみ合わず、足先が地面に触れてしまうことがあります。
つまずきが何度も起こると、転倒につながる可能性もあるため注意が必要です。ランニング中だけでなく、歩いているときにも足が引っかかるようになるケースもあります。
走っているときに脚の動きがおかしくなる
ぬけぬけ病では、走っているときに脚を思い通りに動かしにくくなり、普段とは違う動きが現れることがあります。
例えば、脚が突っ張るように感じたり、足の運びがぎこちなくなったりするなど、走り方に変化が生じる場合があります。
このような症状は、走り始めから現れるとは限らず、一定の距離を走った後やペースを上げたときなどに出てくることもあります。
そのため、本人は「いつものフォームで走っているつもりなのに、脚の動きだけがおかしい」と感じることがあります。なお、症状の現れ方には個人差があります。
歩いているときにも症状が出ることがある
ぬけぬけ病のような症状は、ランニング中だけに現れるとは限りません。場合によっては、歩いているときにも脚に力が入りにくくなったり、足をスムーズに運びにくくなったりすることがあります。
特に、これまで走っているときだけだった症状が歩行中にも現れるようになった場合は、単なるランニングフォームの問題と決めつけないことが大切です。
脚の動きに違和感が続いたり、日常生活にも支障が出たりする場合は、医療機関に相談して原因を確認しましょう。
ぬけぬけ病になる原因は?
ぬけぬけ病が起こる原因については、現在もはっきりと分かっていない部分があります。特定の原因だけで発症するとは限らず、身体の動きや神経の働きなど、さまざまな要因が関係している可能性があります。
では、ぬけぬけ病にはどのような要因が関係していると考えられているのでしょうか。ここから詳しく見ていきます。
ぬけぬけ病の詳しい原因は分かっていない
ぬけぬけ病の詳しい原因は、現在のところはっきりと分かっていません。ぬけぬけ病と関連することがある「動作特異性ジストニア」についても、なぜ特定の動作をしたときにだけ脚の動きに異常が現れるのか、その仕組みにはまだ不明な点があります。
ランナーの動作特異性ジストニアでは、繰り返し行う運動や身体への負担、けがなど、さまざまな要因が関係している可能性が指摘されていますが、特定の一つの原因だけで発症すると決まっているわけではありません。
そのため、「このフォームが悪いからぬけぬけ病になる」「この筋肉が弱いから起こる」といったように、原因を一つに決めつけることはできません。
症状が続いている場合は、走り方だけの問題と考えず、必要に応じて医療機関で相談することが大切です。
けがをきっかけに症状が現れることもある
ぬけぬけ病のような症状は、けがをしたことをきっかけに現れる場合もあります。動作特異性ジストニアについては、繰り返し行う動作による身体への負担やオーバーユース、外傷などが発症に関係する可能性が指摘されています。
ただし、けがをした人すべてに症状が現れるわけではなく、けがが直接の原因になると断定することもできません。
ランナーの場合、脚や股関節などを痛めた後に走り方が変わったり、身体の使い方を強く意識するようになったりすることがあります。
そうした変化と症状が重なるケースも考えられますが、実際に何が関係しているのかは個人によって異なります。
そのため、けがをした後から脚の動きに違和感が続いている場合でも、「けがが原因だ」と自己判断するのではなく、症状の経過を確認しながら原因を探っていくことが大事です。
走り方や動作の感覚が関係することがある
ぬけぬけ病と関連することがある動作特異性ジストニアは、特定の動作を行ったときに症状が現れやすいという特徴があります。
ランナーの場合は「走る」という動作そのものが症状を引き起こすきっかけになることがあり、走り方や脚の動かし方によって症状の現れ方が変化するケースもあります。
また、動作特異性ジストニアでは、特定の動かし方や身体への刺激によって症状が一時的に軽くなることもあります。
こうした特徴から、単純に筋力が不足しているだけではなく、身体の動きを調整する仕組みや、動作を繰り返す中で身についた運動パターンなどが関係している可能性が考えられています。
ただし、「走り方が悪いからぬけぬけ病になる」と決めつけることはできません。症状が現れた場合は、フォームだけを無理に修正しようとするのではなく、症状がどのような動作で起こるのかを確認することも大事です。
ぬけぬけ病は長距離走の選手に起こりやすい?

ぬけぬけ病のような症状は、ランニングを続けている一般の人の中でもみられることがあります。長距離走では、同じ動作を長時間にわたって繰り返すため、脚の動きや身体の使い方が症状と関係する可能性も考えられます。
では、なぜ長距離走ではこのような症状が起こることがあるのでしょうか。ランニング動作の特徴から、その可能性について見ていきましょう。
ランニング中に繰り返す動作が関係している可能性
ランニングは、左右の脚を交互に動かしながら、同じような動作を何度も繰り返す運動です。
長距離走では、長い時間にわたって同じ動作を繰り返すことになるため、こうした反復的な動作が、ぬけぬけ病と関連することがある動作特異性ジストニアに関係している可能性が考えられています。
実際に、ランナーにみられる動作特異性ジストニアは、走っているときに脚の動きに異常が現れることが特徴の一つです。
走るという特定の動作を繰り返すことで、身体の動きを調整する仕組みに何らかの影響が生じる可能性も考えられていますが、詳しい発症メカニズムについては、まだ分かっていない部分があります。
そのため、「長時間おなじ動きを繰り返しているからぬけぬけ病になる」と単純に考えることはできません。
あくまでも、ランニングのような反復動作が症状と関係する可能性がある、という段階で考えておくことが大切です。
左右の脚や骨盤の動きに乱れが生じることがある
ぬけぬけ病と関連することがある動作特異性ジストニアでは、走っているときに左右の脚の動きに違いが現れたり、骨盤の動きに乱れが生じたりすることがあります。
ランニング中の動きを詳しく調べた研究では、片側の骨盤が大きく下がることで、脚の動きにも左右差が生じたケースが報告されています。
また、膝が伸びたままになったり、股関節や足首の動きが通常とは異なったりするなど、症状の現れ方は人によってさまざまです。
このような動きの乱れがあると、本人は「片方の脚だけ動かしにくい」「左右の脚がうまくかみ合わない」と感じることがあります。
ただし、左右差があるからといって、必ずしもぬけぬけ病が原因とは限りません。ランニングフォームにはもともと個人差があるため、症状が現れる状況や経過なども含めて考える必要があります。
ぬけぬけ病は治る?治療方法は?
ぬけぬけ病の症状が続いていると、「このまま治らないのでは?」と不安になる人もいるでしょう。
治療についても、症状や原因によって対応が異なるため、一つの方法ですべての人が改善するとは限りません。
では、ぬけぬけ病と関連する動作特異性ジストニアでは、どのような治療や対処方法が行われているのでしょうか。ここから詳しく見ていきます。
まずは専門医に相談して原因を確認する
ぬけぬけ病のように、走っているときだけ脚の力が抜けたり、足の動きに異常が現れたりする場合は、まず医療機関で原因を確認することが大切です。
「ぬけぬけ病」という言葉だけで原因を判断することはできません。動作特異性ジストニアが関係しているケースもありますが、ほかの神経や筋肉、関節などの問題によって似た症状が現れることもあるためです。
動作特異性ジストニアが疑われる場合は、症状がどのような動作で現れるのかを確認しながら診察を行い、必要に応じて筋電図などの検査が用いられることがあります。
ランナーのジストニアでは、運動障害を専門とする医師に相談することで診断につながった例も報告されています。
症状が続いている場合は、自己判断でフォームを大きく変えたり、無理に走り続けたりするのではなく、これまでの症状の経過や「どのような動作で症状が出るのか」を医師に伝えるようにしましょう。
走ることを一時的に休む方法もある
ぬけぬけ病のような症状がランニング中に繰り返し現れる場合は、いったん走ることを休み、症状の変化をみる方法もあります。
動作特異性ジストニアは、特定の動作を行ったときに症状が現れることがあるため、症状を引き起こしている動作から一時的に離れることで、身体への負担を減らすことにつながる場合があります。
実際に、ランナーの動作特異性ジストニアの症例では、一時的にランニングを中止して、身体の動きを整える運動などに取り組んだ例も報告されています。ただし、ランニングを休むだけで症状が改善するとは限りません。
動作特異性ジストニアの治療については、現在も十分なエビデンスが確立されているとはいえないため、症状が続く場合は医療機関で相談し、自分の状態に合った対応を検討することが大切です。
ボツリヌス毒素注射などが行われることがある
動作特異性ジストニアの治療では、症状に関係している筋肉にボツリヌス毒素を注射する方法が行われることがあります。
ボツリヌス毒素には、筋肉の収縮に関係する神経からの信号を抑える作用があり、過剰な筋収縮によって生じる症状を和らげることを目的として使用されます。
ランナーにみられる動作特異性ジストニアでも、症状が現れる筋肉を確認したうえでボツリヌス毒素を注射し、脚の動きや歩行が改善した例が報告されています。
一方で、効果には個人差があり、十分な改善が得られないケースもあります。そのため、ボツリヌス毒素注射は誰にでも効果が期待できる治療法というわけではありません。
症状の種類や筋肉の状態などを医師が確認し、その人に適した治療法の一つとして検討されます。
脳の手術が行われるケースもある?
ジストニアの治療では、薬物療法やボツリヌス毒素注射などで十分な改善が得られない場合に、脳の手術が検討されることがあります。
代表的な方法の一つが、脳の特定の部位に電極を留置して電気刺激を行う「脳深部刺激療法(DBS)」です。
また、特定の部位を外科的に治療する方法が、動作特異性ジストニアやスポーツに関連するジストニアで行われた報告もあります。
ただし、ランナーにみられる動作特異性ジストニアについては、治療に関する研究自体が少なく、脳の手術をすれば症状が治るとはいえません。
実際、ランナーを含む反復運動によるジストニアでは、診断が遅れたことで不要な侵襲的処置を受けたケースも報告されています。
そのため、脳の手術は一般的な対処法として考えるのではなく、症状や診断、これまでの治療経過などを踏まえて、専門医が慎重に検討する治療法と考えておくとよいでしょう。
フォアフット走法に変えるとぬけぬけ病は治る?
ぬけぬけ病の症状がある人の中には、「フォアフット走法に変えれば症状が改善するのでは?」と考える人もいるかもしれません。
実際に、走り方を変えたことで症状が変化したというケースもあります。ただし、フォアフット走法に変えればぬけぬけ病が治るとは一概にいえません。
ここでは、走法を変えることで症状が改善したケースや、反対に症状が悪化したケースについて紹介します。
フォアフット走法に変えて症状が改善した人もいる
ぬけぬけ病のような症状があるランナーの中には、走り方や足の接地方法を変えることで、症状が一時的に軽くなったと感じる人もいます。
動作特異性ジストニアでは、同じ動作でも身体の使い方を少し変えることで、症状が変化することがあります。
実際に、ランナーの症例では、着地方法や身体の動かし方を意識することで症状が一時的に改善した例が報告されています。
こうしたことから、「フォアフット走法に変えたら症状が軽くなった」というケースがあっても不思議ではありません。
ただし、フォアフット走法そのものがぬけぬけ病を改善することが確認されているわけではなく、走り方を変えたことによって症状が変化した可能性も考えられます。
そのため、フォアフット走法への変更を、ぬけぬけ病を治すための方法として一律に考えるのは避けたほうがよいでしょう。
走り方を変えることで症状が悪化する場合もある
走り方を変えることで症状が軽くなる人がいる一方で、反対に脚の動かしにくさや違和感が強くなる場合もあります。
動作特異性ジストニアは、特定の動作を行ったときに症状が現れやすく、身体の動かし方や動作パターンを変えることで症状が変化することがあります。
ランナーの動作特異性ジストニアでも、走る方向や身体の動かし方、足への刺激、路面などを変えることで、症状が一時的に軽くなったり、反対に症状が現れやすくなったりするケースが報告されています。
そのため、「フォアフット走法に変えれば改善する」と考えて無理にフォームを変えると、かえって走りにくさが増す可能性もあります。
特に、これまで身につけてきた走り方を大きく変える場合は、症状だけでなく身体への負担にも注意が必要です。
フォアフット走法に限らず、走り方を変えることで症状が変化した場合は、その変化を記録しておくと、医療機関で症状を説明するときにも役立ちます。
走法を変えるときは無理にフォームを変えない
ぬけぬけ病の症状を改善したいからといって、無理に走り方を変えることはおすすめできません。フォアフット走法など、これまでとは大きく異なるフォームを意識すると、かえって脚の動かしにくさや違和感が強くなる場合があるからです。
動作特異性ジストニアでは、身体の動かし方や感覚を変えることで症状が軽くなるケースがある一方、どのような方法が合うのかには個人差があります。ランナーの症例でも、特定の動作や感覚によって症状が変化することが報告されています。
そのため、「フォアフット走法に変えれば治る」「脚の動かし方を変えれば改善する」といった情報だけを頼りに、フォームを大きく変更するのは避けたほうがよいでしょう。
走り方を変える場合は、症状の変化や身体への負担を確認しながら、無理のない範囲で行うことが大切です。
私自身も、フォアフット走法の練習を続けた後に症状が悪化した経験があります。こうした経験談は、すべてのランナーに当てはまるわけではありませんが、走法を変えることが必ず症状の改善につながるわけではないことを伝える一例として紹介できます。
私のぬけぬけ病の症状とこれまでの経過
ここからは、私自身に現れたぬけぬけ病の症状と、これまでの経過について紹介します。
私の場合は、股関節の故障をきっかけに走り方が変わり、その後、脚の力が抜けたり、つまずいたりする症状が現れるようになりました。さらに、フォアフット走法の練習を続けたことで症状が変化した経験もあります。
あくまで私自身の経験ですが、同じような症状に悩んでいるランナーの参考になればと思い、できるだけ具体的に紹介していきます。
股関節の故障後に脚の力が抜けるようになった
私の場合、ぬけぬけ病のような症状が現れるようになったきっかけの一つは、股関節の故障でした。
故障からある程度回復した後も、以前と同じように走れる状態には戻らず、走り方や脚の動かし方を意識することが増えていきました。
その頃から、走っている途中に片方の脚へ急に力が入りにくくなったり、脚が思うように動かなかったりすることが起こるようになりました。
最初は「まだ股関節の故障が完全に治っていないのかな」と考えていました。しかし、時間が経っても症状が繰り返されるため、単なる故障後の違和感とは違うのかもしれないと思うようになりました。
私の場合は、股関節の故障と脚の症状が時間的に重なっています。ただし、けがや故障がぬけぬけ病の直接的な原因になったと断定できるわけではありません。あくまで、私自身の経験として紹介しています。
つまずいたり、腰が落ちたりするようになった
症状が出るようになってからは、走っているときに脚が思うように動かず、足先が地面に引っかかってつまずくことが増えていきました。
また、着地したときにしっかり身体を支えられず、膝がカクッとしたり、腰がストンと落ちたりするような感覚もありました。
自分では普段と同じように走っているつもりなのに、突然、脚の動きがうまくかみ合わなくなるのです。
この頃から、単純に脚の筋力が落ちたというよりも、「脚を思い通りに動かせないこと」が問題なのではないかと感じるようになりました。
歩いているときにも脚の力が抜けることがある
私の場合、症状はランニング中だけに限られませんでした。普段の生活で歩いているときにも、突然脚の力が抜けるような感覚が出ることがありました。
普通に歩いているつもりなのに、脚がスッと抜けるような感じがして、足元が不安定になることがあります。
走っているときのように激しい動きをしているわけではないため、「なぜ歩いているだけで脚がおかしくなるのだろう」と不思議に感じていました。
それまでは「走り方に問題があるのではないか」と考えていましたが、歩いているときにも症状が出るようになったことで、単純なランニングフォームだけでは説明できないのかもしれないと思うようになりました。
実際に、ランナーの動作特異性ジストニアでは、走るときに現れていた脚の異常が歩行にも及ぶケースが報告されています。
ただし、歩行中に脚の力が抜ける症状にはさまざまな原因が考えられるため、同じ症状があれば必ずぬけぬけ病だと判断できるわけではありません。
フォアフット走法を長期間練習して症状が悪化した
私は、股関節の故障後に走り方を見直し、フォアフット走法の練習を長く続けていた時期があります。
ところが、フォアフット走法が自分には合わないと感じるようになり、以前のヒールストライク走法に戻しました。
すると、その数か月後から、ランニング中に右足のつま先が地面に引っかかり、転倒することが増えていきました。
それまでとは違う脚の動きを意識していたこともあり、「自然に走るとはどういう動きだったのか」が分からなくなっていたように感じます。
走るたびに右脚の動きを気にするようになり、かえってスムーズに脚を動かしにくくなっていきました。
もちろん、フォアフット走法からヒールストライク走法に戻したことが、転倒や症状の悪化を直接引き起こしたと断定することはできません。
ただ、私自身にとっては、走り方を大きく変えた経験と、その後に症状が悪化したことが強く印象に残っています。
この経験から、ぬけぬけ病の症状があるからといって、特定の走法に無理に変えるのではなく、自分の身体の動きや症状の変化を確認しながら走ることが大切だと考えるようになりました。
私のランニング中の転倒については、こちらの記事で詳しく解説しています。

自分本来の走り方を意識するようになった
フォアフット走法の練習や、その後の症状の変化を経験してから、私は自分本来の走り方をもう一度探すようになりました。
私の場合、長く走れない期間が続いたことで、以前とは違う走り方がクセになってしまったように感じています。そのため、単純に「何も考えず自然に走ればいい」というわけではありません。
クセになっている動きを直すためには、ある程度意識して走り方を修正する必要があります。そこで思い出すようにしているのが、まだ問題なく走れていた頃の自分の走り方です。
昔は特に意識しなくても普通に走れていたので、そのときの感覚を取り戻せれば、自分本来の走り方に近づけるのではないかと考えています。
ただ、昔どのように脚を動かしていたのか、細かい部分まですべて覚えているわけではありません。
そのため、現在も試行錯誤しながら、自分にとって自然で無理のない走り方を探しているところです。
私にとっては、特定の走法を無理に身につけることよりも、これまでの経験を振り返りながら、自分本来の走り方を少しずつ取り戻していくことが大切なのだと考えています。
ぬけぬけ病かもしれないときに大切なこと
ここまで、ぬけぬけ病の症状や原因、治療方法、そして私自身の経験について紹介してきました。
もしランニング中に脚の力が抜けたり、足が思うように動かなかったりする症状が続いている場合は、無理に走り方を変えたり、我慢して走り続けたりしないことも大切です。
最後に、私自身の経験も踏まえながら、ぬけぬけ病かもしれないと感じたときに意識したいことを紹介します。
症状があるのに無理して走り続けない
ランニング中に脚の力が抜けたり、足が引っかかったりする症状がある場合は、無理をして走り続けないことも大切です。
「そのうち治るだろう」と考えて走り続けていると、つまずきや転倒への不安から、脚の動きを必要以上に意識してしまうことがあります。
私自身も、症状が気になるほど走り方を細かく考えるようになり、自然に走ることが難しくなった経験があります。
症状が出たときは、いったん走るのをやめて身体の状態を確認したり、休んで症状の変化をみたりすることも一つの方法です。
動作特異性ジストニアの治療については、現在も十分なエビデンスが確立されているとはいえないため、症状が繰り返す場合は自己判断だけで走り続けず、医療機関に相談することをおすすめします。
走り方を必要以上に意識しすぎない
ぬけぬけ病のような症状があると、「脚をこう動かさなければ」「この場所で着地しなければ」と、走り方を細かく意識するようになることがあります。
私自身も、症状が気になるほど脚の動きや足の着き方などを考えるようになり、以前の自然な走り方が分からなくなっていきました。
一方で、クセになっている走り方を直すためには、ある程度フォームを意識することも必要だと感じています。
そのため、走り方をまったく意識しないことが大切なのではなく、必要以上に細かな動きに意識を集中させないことが重要なのではないかと考えています。
特に、走るたびに「次の一歩はこうしなければ」と考え続けると、かえって身体を動かしにくくなることもあります。
自分に合った走り方を探す場合も、一度にすべての動きを変えようとせず、身体の状態を確認しながら少しずつ試していくことが大切です。
ランニングフォームを意図的に変えることには、どのようなリスクがあるのでしょうか。ランニングフォームを変えるリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

症状が続く場合は医療機関に相談する
ランニング中に脚の力が抜けたり、足が引っかかったりする症状が繰り返し起こる場合は、自己判断で「ぬけぬけ病だ」と決めつけず、医療機関に相談することをおすすめします。
ぬけぬけ病という呼び方は一般的な呼称であり、同じように脚が動かしにくくなる症状でも、原因は一つとは限りません。
動作特異性ジストニアが関係している場合もあれば、神経や筋肉、関節など別の問題が関係している可能性もあります。
医療機関を受診するときは、「いつから症状が出たのか」「走っているときだけなのか」「歩いているときにも起こるのか」「どのような動作で症状が出やすいのか」などを伝えると、症状を把握するための手がかりになります。
私自身も長く症状と向き合っていますが、まだ自分本来の走り方を探している途中です。
ぬけぬけ病のような症状が続いている人は、一人で悩み続けるのではなく、自分の症状を整理したうえで専門家に相談することも検討してみてください。
ぬけぬけ病についてのまとめ
今回は、ランナーに起こる「ぬけぬけ病」について、症状や原因、治療方法、走り方との関係、そして私自身の経験を紹介しました。
ぬけぬけ病には、走っているときに脚の力が抜けたり、膝がカクッとしたり、足が引っかかってつまずいたりするなど、さまざまな症状があります。
動作特異性ジストニアと関連するケースもありますが、「ぬけぬけ病」という言葉だけで原因を判断することはできません。
また、フォアフット走法などに走り方を変えることで症状が変化するケースもありますが、特定の走法に変えれば改善するとは限りません。
私自身も走り方を変えたことで症状が悪化した経験があり、現在も自分本来の走り方を探している途中です。
もしランニング中に脚の力が抜ける、足が思うように動かない、つまずくといった症状が繰り返し起こっているなら、無理に走り続けたり、自己判断でフォームを大きく変えたりするのではなく、症状の経過を整理して医療機関に相談することも検討しましょう。
ぬけぬけ病の症状や経過には個人差があります。この記事が、同じような症状に悩んでいるランナーが自分の状態を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

